【視点:??】
どうしてこうなってしまったんだろう。
ただの他愛ないうわさ話のはずだった。
ほんの少し好奇心が疼いて、友人と共に遊びに来ただけ、それだけだ。
何も壊したりしていない、悪いことなんて何も。
ちょっと見学に来ただけじゃないか。
それなのにどうして、こんなことになるなんて聞いていない!
真白く蠢く蟲が己の体を這いずり回っている。
もはやうまく力を入れることすら難しい四肢を必死に動かし抵抗を試みても、ただ巨大な芋虫のような滑稽な姿を晒すのみで、何の意味も為さない。
自分はまだ死んでいない、死んでいないのに、隣のかつて友人だったものから移ってきて、食い漁られそうで、気が狂う手前だった。
横たわる虚ろな眼窩と目が合う。
お前もこっちにこいと言われているかのようだ。
いやだ。
死にたくない。
こんなことになるならせめて赤い羽織の子供の言う通り、大人しくあの部屋に引きこもっていたらよかった。今からでも這い蹲って戻れば間に合うんじゃないか?
いや、でも、……確か、蟲は穢れだと言っていた。
穢れを持ち込むことは出来ないと。穢れに侵食された死体は入れられないと。
だから友人を持って出て来たんだ。
戻れるわけがない。
どうしたらいい、どうしたら。
ぽた、ぽた、ずる、ずる………と。
襖の向こう、廊下の奥で音がする。
水の滴る音。それから、何かを引き摺るような音。
ゆっくりとこの部屋に近づいてくる。
深く濁った海の湿り気と海洋生物特有の生臭い醜悪な匂いが、この部屋の腐敗臭と混じり合い、鼻腔を満たし、耐え切れず限界まで膨れ上がった恐怖心と共に嘔吐した。
ずる、……………、
…やがて、ぴたりと音が止まった。
部屋の前で、あれがじっとこちらを伺っている気配を感じる。
ああ、
お客さんが来た。
逃げなくては、逃げて、どこかへ、
どこに?
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